ヨガの呼吸法は、ヨガの三大要素(アーサナ・呼吸・瞑想)の一つ。さまざまな種類があり、それぞれのやり方や効果が異なる、とても奥深いもの!
普段からヨガを練習している方の中には、「ヨガの呼吸法、聞いたことはあるけど詳しくはわからない」という方もいるのではないでしょうか?
ヨガ歴7年・現役インストラクターの筆者も、はじめの頃は、「ポーズの間とりあえず呼吸するけど…呼吸法についてはよく知らない」という具合でした。
しかし、今ではヨガの種類やその日の気分に合わせて呼吸法を使い分けるようになりました!
今回は、そんな呼吸法の魅力にどっぷりハマっている筆者が、ヨガの呼吸法の種類、そしてそれぞれの具体的なやり方と効果を詳しく解説していきます。
ヨガの呼吸法「プラーナヤーマ」
ヨガの呼吸法は、サンスクリット語で「プラーナヤーマ」と言います。「プラーナ」と「ヤーマ」を掛け合わせた言葉です。
「プラーナ」とは、「エネルギー」や「氣」。熱が生じたり、モノが移動したり、地球上のものが動くためには、エネルギーが必要ですよね。ヨガでは、モノ・カラダの動きや変化をもたらす力(エネルギー)のことを「プラーナ」と言います。
そして「ヤーマ」は、「抑制」や「コントロール」という意味。
つまりプラーナヤーマとは、生命エネルギーである「プラーナ」を抑制する方法のこと。言い換えると、カラダの機能や呼吸などの動きを意識的にコントロールする方法です。
呼吸によってカラダの外からプラーナを取り入れて体内に循環させ、カラダの中に眠るエネルギーを目覚めさせることで心身を整えます。
このプラーナヤーマの理論は古代インドで生まれた知恵ですが、現代科学でも、呼吸によって自律神経が整うことが明らかにされています。

ヨガの呼吸法はなぜ重要か
人間にとって呼吸は命を繋ぐ重要なもの。
しかしヨガにとって呼吸とは、この生理学的な役割以外にも様々な意味を持ちます。
カラダの中にプラーナ(エネルギー)を行き渡らせたり、筋肉やカラダを柔軟にしヨガのポーズを深めたり、自律神経を意識的にコントロールする役割も担ってくれます。
そのためヨガクラスであえて呼吸法の時間をとって練習するくらい、大切なのです。
ヨガの呼吸法による効果
ヨガの呼吸法は、さまざまな健康効果をもたらします。
中でも呼吸法を行うことの最大の効果は、自律神経が整うこと。
満員電車での通勤通学、学校・職場・家庭での人間関係、長時間のパソコンやスマホの使用など、現代のライフスタイルには、ストレスや緊張によって自律神経が乱れる要素がたくさんあります。そして自律神経が乱れることで様々な不調が引き起こされてしまいます。
自律神経の乱れによる症状
- ・小さなことでもイライラする
- ・頭痛
- ・肩こり
- ・不眠
- ・冷え性
- ・重いPMS、PMDD、生理痛
などなど…
自律神経の仕組み
活動している日中には心身を興奮させる「交感神経」が活発になり、休息時には心身をリラックスさせる「副交感神経」が活発になります。この二つの神経が交互に優位になりバランスが保たれているとき、自律神経が整っていると言えます。
しかし現代人の多くはストレスや緊張状態が長く続いてしまうことによって、交感神経が優位になり続けてしまい、自律神経のバランスが崩れがちです。
ヨガの呼吸法を用いれば、副交感神経が優位になるようにある程度コントロールでき自律神経のバランスを整えることができます。
結果として、うつ気分、頭痛、不眠など、心やカラダの様々な不調も解消することができるのです。
ヨガの呼吸法のコツ
ヨガの呼吸法でポジティブな効果を得るためにはいくつかコツがあります。
① 呼吸がしやすい姿勢で座る
あぐらや正座など、安定して呼吸がしやすい座り方を選びます。
両坐骨に均等に体重を乗せ、緊張が起こらない程度に骨盤、背中、首を直立に保ちましょう。
② バンダを意識する
バンダとは「締める」という意味。のど、みぞおち、会陰部を引き締め、カラダの中を流れる空気やエネルギーをコントロールするためのヨガの手法です。
・ジャーランダラ・バンダ:アゴを引いてのどの奥の気道を締める。
・ウディーヤナ・バンダ:横隔膜を引き上げる。いわゆるお腹を凹まし、力を入れている状態。
・ムーラ・バンダ:会陰部の内側または肛門を引き上げる。
③ 無理をしない
特に初めのうちは、自分の体や心が心地良い程度に行うようにします。呼吸法によって苦しくなったり、クラクラめまいがしたりする場合は無理をしていると判断し、調節してみましょう。
④ 生理、妊娠中の方、血圧トラブルを持っている方は腹圧をかける呼吸法は行わない
息を止め、腹圧をかける呼吸法は子宮を圧迫するため、生理中や妊娠中の方は避けるようにしましょう。
また、血圧をあげたり下げたりする作用もあるため、高血圧や低血圧の方は注意しましょう。
ヨガのおすすめ呼吸法5つ
ヨガの呼吸法には、アーサナ(ポーズ)と同じように様々なやり方があります。そしてヨガの流派によってどの呼吸法をとるかが分かれているのです。
現在はハタヨガをはじめとし多くのヨガで腹式呼吸を行いますが、アシュタンガヨガなど動きの多いヨガでは胸式呼吸を行います。
腹式呼吸では「交感神経」に働きかけ、胸式呼吸では「副交感神経」に働きかけます。呼吸法によってその目的や効果が異なるため、自分の状態やシチュエーションに合わせて選ぶと良いでしょう。
ここでは代表的な呼吸法5つを紹介します。まずは基本とされている「腹式呼吸」をマスターし、慣れてきたら他の呼吸法にもチャレンジしてみるのがおすすめです。
腹式呼吸
鼻からの呼吸で横隔膜を動かす呼吸法です。空気を吸うときに使われる筋肉の一種である「横隔膜」を上下させることで、お腹が拡大収縮します。
腹式呼吸によって横隔膜を大きく動かすことで、その周りの神経を刺激し、副交感神経に働きかけます。そのため、乱れた自律神経を整えるに効果的です。
胸式呼吸
鼻からの呼吸で、胸郭を前後左右に広げて肋骨を広げ、肺を拡張する呼吸法です。
胸式呼吸を行うと交感神経を活発にするため、朝目覚めたい時、よく動く前などに適しています。
片鼻呼吸(ナーディーショーダナ)
片鼻呼吸法では、腹式呼吸を用いながら左右の鼻で交互に吸ったり吐いたりを繰り返します。
右鼻から吸う時は交感神経が活性化され、左鼻から吸う時は副交感神経が活性化されると言われています。左右の鼻で交互に呼吸することで、自律神経を整えることができカラダのバランスを整える効果があります。
ウジャイ呼吸
力強い胸式呼吸を用いる方法で「勝利の呼吸」とも呼ばれています。喉の奥を閉じ、「シュー」というような摩擦音を立てながら行う呼吸法です。
この呼吸では集中力を高めることができ、ヨガのアーサナや瞑想に取り入れるのも効果的です。
カパラバディ呼吸
カパラが「頭がい骨」、バディが「輝く」という意味を表します。つまり、頭をスッキリと活性化させる呼吸法です。
息を吸う時は自然に肺を膨らませ、吐く時に意識を集中させて力を入れるのが特徴的です。
まとめ

ヨガの呼吸法を実践することで、乱れていた自律神経が整えられ、心身の健康が促進されます。
朝起きた後や夜寝る前、ヨガアーサナの練習の前後など、ご自身の時間が取れる時に取り入れてみるといいですね。
日常生活の中で、少しヨガの呼吸を実践してみると、カラダや心が楽になりますよ!